腎は五行説で「水」の性質をもつ臓という話しをしましたが、五蔵の中で、この「水」をグイグイ吸い取ってしまう臓があります。
五行で「木」の性質を持つとされる、「肝」です。
肝は春になると、特に旺盛に働き出すとされます。
(「木」や植物全般は、春になると芽吹き、葉を茂らせ、グイグイ成長していきますね)
もともと「将軍之官」(『素問』霊蘭秘典論(08))と言われるほど、「猛々しい」性格の臓ですから、木々が重力に逆らって、葉を生い茂らせるように、全身に気血を巡らせてくれます。
その際に、「もっと水をよこせ」と腎がキープしていた水をガンガン吸い取ってしまうので、冬の間にしっかり水(東洋医学的にいうなら、「陰」の成分)を蓄えておけなかった人や、もともと蓄える力が弱い(腎が弱い)人は、この肝からの過大要求に耐えられず、腎がダウンする、という現象が起こります。
結果、春に「腰がおもだるい」「下半身が冷える」というような腎の弱りからくる症状を呈するようになります。
足腰の冷え症の方が、「秋冬もつらいんだけど、春の方がつらい」という方がおられるのはこの為です。
(単純に春の時期に猛りすぎた肝の気が(ストレスか何かのせいで)のびのびしきれず滞っておこる、ということもおおいです)
もちろん春特有のアレルギー症状も、「腎が弱っているせいで肝を制御しきれない」為に起こっていることがよ~くあります。
いずれのケースも、腎を助けるような鍼(おもに足腰にあるツボが多い)をしてあげると、だんだん足腰がポカポカとして元気になってきますよ。
(そしてよく眠れます・・・「春眠不覚暁」というのは健康な状態です。)
長い冬を越え、せっかくの春を迎えたのに、体調が優れないのは何とももったいないことです。
皆さまも良き春を迎えられますように。