漢方と鍼灸3 桂枝湯

葛根湯に比べると、あまり聞きなじみのない薬ですが、桂枝湯は漢方の基礎的な処方を網羅した『傷寒雑病論』(張仲景著2-3世紀)において非常に重視されている漢方です。

 

というのも、前述の医学書には「桂枝○〇湯」という桂枝湯の変化球がずらりと並んでいます。

1,2で出てきた葛根湯と麻黄湯も、よくよくみれば桂枝湯の変化球のようにもみえます。

(材料がかぶる)

 

それほどに重要な桂枝湯が、どんなタイプの風邪に使われるかといいますと、

 

太陽中風、陽浮陰弱。熱発汗出悪寒、鼻鳴乾嘔者、桂枝湯主之。

(太陽の中風、陽浮にして陰弱。熱発し汗出て悪寒し、鼻鳴り乾嘔する者、桂枝湯これをつかさどる。

 

※中風:漢方では風邪は「風邪(ふうじゃ)」という、風に当たることで風邪を引くとされますが、その風に当たるのを「風に中る(あたる)」と読みます。「食中毒」の中の字も同じで、「あたる」という意味です。 

 

太陽病、頭痛、発熱、汗出、悪風者、桂枝湯主之。

(太陽の病、頭痛み、熱発し、汗出て、悪風する者、桂枝湯これをつかさどる。)

 

陽浮陰弱、の下りは脈診における所見を記したものとされていますが、ここの解釈はいろいろあるので、後回し。

他にも症状が書いてあったりもしますが、大事なのは「汗出」ということ。

 

葛根湯も麻黄湯も「無汗」と書かれていましたが、桂枝湯は汗が出ているときに使いなさい、ということ。

 

前回の麻黄湯では、桂枝が麻黄と一緒に発汗を促すように書きましたが、桂枝という生薬は組み合わせいかんによって、汗を出しもするし、閉めもする、ということでしょうか。

 

ちょっと桂枝湯を分解してみます。

 

桂枝(ケイシ)

芍藥(シャクヤク)

甘草(カンゾウ)

生姜(ショウキョウ)

大棗(ダイソウ)

 

主役の桂枝は、

 

味辛温。生山谷。治上気咳逆、結気、喉痺吐吸。利関節、補中益気。久服通神、軽身不老。(『神農本草経』)

 

・・・とあります。

 

辛くて温めて、皮膚の毛穴も温めて開かせ、皮膚に張り付いている風邪を追っ払うわけですが、発汗の力が麻黄に比べると穏やかとされます。

ここで、「芍藥」「甘草」「大棗」が入ります。

(葛根湯にも入ってますけど)

芍藥は、陰の気を収斂(ぎゅっと固める)させる作用があり、ここでいう陰の気、というのが

「汗が漏れ出ちゃっている、毛穴と肌」で、風邪のせいで弱ってしまった肌を元気づけて引き締める、という方向に働くとされます。

一緒に入っている大棗や甘草も「補藥」といって、元気をつける方向に働く薬です。

 

つまり、桂枝湯は

風邪のせいで、皮膚が弱ってしまい、汗がダラダラ出てる、

風邪が居座ってるせいで、寒気も止まらない、

そんな時、皮膚・肌を元気づけて引き締め、同時に肌に居座っている風邪にお帰りいただく薬、

(生姜は、猛烈な辛味で一気に温め、風邪を追い払う桂枝を助けます)

と考えます。

 

う~ん、わかりやすくしようとして、かえって分かりにくくなったような・・・(笑)

 

とりあえず、麻黄湯・葛根湯と決定的に違うのは「汗がじんわりでている」ということです。

(ぽたぽたと垂れ落ちる汗ではありません。それだと、もう違う病気になります。)

 

鍼をする時にも、この「引き締める」という作用を意識してツボを選んで、鍼もしますが、この芍藥・甘草・大棗・桂枝・生姜の意味を意識するのとしないのとで、全然鍼の刺し方が変わるように思います。多分(笑)

 

とっ散らかしてしまいましたが、次回、喘息持ちの方なら馴染み深いであろう、小青竜湯について。

 

桂枝湯・麻黄湯・葛根湯と勉強していくと、小青竜湯も避けて通れません。

 

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