最近、知り合いから「五虎湯」を飲んでるヨ、という話しを聞いたので、これまでの流れからもちょうどいいので、「麻杏甘石湯」(まきょうかんせきとう)について書いてみます。
麻杏甘石湯。
分解すると、
麻黄
杏仁
甘草
石膏
からできています。
入っている生薬の頭文字を取って、麻杏甘石湯と呼ばれます。
麻黄湯と比べると、
麻黄
杏仁
甘草
桂枝
桂枝が石膏(セッコウ)に変わっています。
これにさらに桑白皮を加えたのが「五虎湯」(『万病回春』)です。
桂枝湯・麻黄湯の回でも書きましたが、麻黄と桂枝が組み合わさると発汗作用が強化されますが、桂枝を抜くことで発汗作用が抑えられ、代わりに入る石膏は、清熱作用といって体内の熱邪(悪さをする熱)を冷ます作用があります。
出典の『傷寒雑病論』では、
発汗後、不可更行桂枝湯、汗出而喘、無大熱者、可与麻黄杏仁甘草石膏湯。
とあります。
風邪を引いた。
発汗させて治そうとしたけど、汗が出てもなおセキがある。
無大熱・・・というのは肌がそれほど熱くないこと。
(ここで「大熱」があったら、病気が別のステージになることを意味します)
悪寒・悪風の字がこの条文にはないので、風寒邪が入って桂枝湯で治そうとしたら、さむけは取れたけど、汗が出たままセキして肌はそんなに熱っぽくもない。
そんな時は、不可更行桂枝湯=桂枝湯(とその仲間)は更にあげちゃだめ
石膏の入った麻杏甘石湯がいいよ、ということです。
・・・桂枝湯の回で、桂枝湯は汗がじんわりでている時に使う、と書きましたが、ここでは「発汗したあと、まだ汗があっても、更に桂枝湯を飲んじゃだめだよ」とあります。
これだけ読むと、「桂枝湯って発汗させる薬なの? 話違わない?」となります。
厳密には、桂枝湯は発汗させる薬です。
桂枝湯に含まれる、桂枝+生姜のペアで肌を温めて発汗し、汗と共に風邪を追い出します。
ただひたすら発汗させるだけでなく、必要な分だけ発汗したら、風邪に痛めつけられた肌の腠理(毛穴)を芍藥・大棗で引き締めさっさと閉じる、という考え方のようです。
(違うヨ、という方がいらしたら教えて頂けるとありがたいですm(_ _)m)
外から入ってきた風邪(ふうじゃ)をはじめ六淫の邪は、必ず汗か尿か便で出さないといけないのですが、基本的に風邪(ふうじゃ)は汗で追い出すのがセオリーみたいですね。
(この辺も、キチンと書いてる古典があったはずなんですが、ど忘れしました(-_-;)思い出したらまとめて書いてみますね)
で、話しを戻します。
麻杏甘石湯で、一緒に入っている杏仁ですが、これは肺と肺の経絡の塞がりを開き、咳を止める作用を持つとされます。
(肺気の宣通・疏散、止咳平喘)
つまり石膏とペアになることで、肺(および肺と関わるとされる、鼻・皮膚・粘膜)の熱を冷まし、さらに麻黄の発汗作用でその熱の出口を開けておく、という薬です。
この条件がそろった喘息などにも対処したりするそうですよ。
鍼灸だと、肺のある胸の中の熱を冷ます、という経穴が候補になります。
ちょっと長くなったんで、続きは明日。
(参考図書)
中国傷寒論解説 劉渡舟
神農本草經解説 森由雄