前回のブログで、小柴胡湯が対象となる風邪は「表」と「裏」の間に風邪がある時、と書きました。
小柴胡湯が対象となる風邪のステージは、「半表半裏証」または「少陽病」と呼ばれます。
表と裏の間ってどこ? というところで、前回は終わってしまいましたが、この「少陽病」という名前がカギになります。
前回でも書いた通り、
身体の表面に風邪が出てきたら=寒気
身体の中にまた入り込まれたら=熱感
その間を行ったり来たりするので、「往来寒熱」という現象が起こる、という位置感覚でもいいのですが、
もう一つ、鍼灸をする時は必ず使う東洋医学の概念に「臓腑経絡」というものがあります。
全身をめぐる「気」が流れるメインストリートを「経絡」と呼び、経絡は必ず「臓腑」に繋がっているので、この繋がりを重視して「臓腑経絡」と呼びますが、メインとなる12の経絡のうち「少陽」の名を冠する臓腑経絡に「足の少陽胆径」と「手の少陽三焦経」の二つがあります。
小柴胡湯のステージである「少陽病」の少陽とは、この二つの少陽経、特に「足の少陽胆径」のことを指しているととらえると、しっくりきます。
※手の少陽三焦経のことも指していると考えられていますが、「三焦」の話は始めると物凄くややこしくなるので、また別の機会にさせてくださいm(_ _)m
足の少陽胆径が流れるルートは、複雑ではあるのですがザックリみると「身体の横側」です。
イメージしやすいように、外目尻と乳首と膝小僧の外側を一直線に結んだ線の外側と思ってください。これが「少陽のエリア」とします。(あくまでザックリ。。。実際には、もっと複雑に内外を行き来します)
↑ラジオ体操の、この動作で伸びる部分といってもいいです(^^)
そうすると「あばら骨のある脇腹」辺りが少陽のエリアに入りますが、前回出てきた条文の、、
太陽病不解、轉入少陽、脇下鞕滿、乾嘔不能食、往来寒熱、尚未吐下、脉沈緊者、與小柴胡湯。
、、、とある「脇下」がこのあばら骨があるあたりを指していると考えます。
脇下鞕滿とは、この脇辺りが張り詰めて苦しい感じを指します。
この段階の風邪になると、足の少陽胆径のエリアが苦しい感じがする、というのを古人は知っていたようです。
このほかにも、「傷寒雑病論」には鍼灸についての記載(どこそこに鍼してから、こうしなさい。とか)が複数あり、古代の医者は鍼灸と漢方薬、両方を使い、身体を詳しく診察しながら処方していたのだろうとうかがい知ることができます。
で、この小柴胡湯ですが、風邪のステージが完全に「少陽病」に入ってしまうと、発汗させたらダメ。
(発汗法は、麻黄湯・小青竜湯などが使われる「太陽病」での治療法)
かといって便を下して治すのもダメ。
(下法、といって「裏」に入って熱化してしまった状態「陽明病」というステージでの治療法の一つ)
じゃあどうするのか、ということで、入ってきた風邪(邪気)が身体の横側・脇の辺りで停滞しているのなら、この辺りの「通り」をよくして、生体が治癒しやすい状態してあげます。
「和解方(わかいほう)」というのですが、小柴胡湯の主役である「柴胡」が、少陽胆径の通りをよくする働きをします。
また長くなるので、小柴胡湯の組成を分解しながら、ここまで小柴胡湯が多く使われているワケを次回で書いてみたいと思います。
茈胡。一名地熏。味苦平。生川谷。治心腹去腸胃中結気、飲食、積聚、寒熱邪気。推陳致新。久服軽身。明目益精。
(『神農本草経』より)