漢方と鍼灸12 小柴胡湯③

先に前回の話をまとめます。

 

小柴胡湯は、風邪が体表と体内の間=半表半裏と呼ばれる中途半端な位置まで来たときに使う。

そして、ちょっと補足しますと、前回で書いた「足の少陽胆径」と呼ばれる身体の側面を流れるルート、

この経絡の流れをよくすることで治癒を助けると書きました。

 

半表半裏なの? 少陽胆径なの? と迷いそうですが、少陽胆径(と少陽三焦経も)という臓腑経絡が、全身で管理するエリアが「半表半裏」と思っておいてください。 

 

同じように、葛根湯・麻黄湯・桂枝湯などが使われる「太陽病」は、「表」で風邪と戦っている状況であり、「太陽膀胱経」(と太陽小腸経)という臓腑経絡が、全身の「表」を管理していて、

完全な「裏」に風邪が入ってしまうと、「陽明胃経」(&陽明大腸経)という臓腑経絡が管理するエリアになります。

 

さて、小柴胡湯ですが、

 

入っている生薬をバラバラにしてみましょう。

 

柴胡

黄芩

半夏

生姜

人参

炙甘草

大棗

 

以上で構成されます。

 

トップにある「柴胡」が、さっきから出てくる「少陽」の経絡の通りをよくしてくれる生薬です。

テキストによっては「少陽の専藥」という表現もされます。

分かりやすく言うなら、「身体の横側をスッキリさせてくれるモン」とでもいいましょうか。

 

一緒に入る「黄芩」は、体内にたまった「熱」を冷ましてくれる薬で、柴胡とペアになることで「少陽」の経絡にたまった熱を外に追い出す力を発揮します。

 

 

半夏と生姜は、組み合わさることで「発散」と「下降」の作用を発揮し、

体内の停滞を発散させるとともに、「吐き気」を「降ろし」てくれます。

(少陽病の症状の一つに、「吐き気」があります。 太陽病不解、轉入少陽、脇下滿、乾不能食、、、

 

更に、

 

人参(スーパーにあるニンジンじゃなくて、チョウセンニンジンのこと)

炙甘草

大棗

 

これらは、東洋医学の臓腑でいうところの「脾」臓、ザックリいうなら消化器官を元気にする生薬です。

この3者は、風邪が更に奥の奥のステージ「太陰病」とよばれる「本格的に元気がなくなってきたぞ」というステージに移行するのを防ぐ意図があります。

 

こうしてみると、小柴胡湯は「身体の横側の通りをよくする」だけでなしに、風邪全体の流れと身体全体の動きを見据えたような構成になっています。

 

専門用語でいうなら「昇・降、開・閉、扶正・祛邪、すべての作用を備える」んだってさ(中国傷寒論解説)。

 

 

さてさて、この小柴胡湯。

「少陽胆径」を動かす薬なわけですが、この少陽と少陽と表裏をなす臓腑経絡は「肝」の臓。

その臓腑経絡「足の厥陰肝経」。

鍼灸の臨床をしていると、この「肝」と「胆」の臓腑経絡の故障が原因で起こった病気の方が、それはそれは、たくさんいらっしゃいます(笑)

*注意:西洋医学における「肝臓」「胆のう」とは、違います。病院で肝臓病だ、と診断されたからと言って小柴胡湯やそれに準ずる治療が効くわけではありません。

 

鍼灸でも「少陽胆径」や表裏関係にある「厥陰肝経」の臓腑経絡を調整するわけなんですが、

私が学んでいる治療スタイルは、鍼をするのは「可能な限り、1カ所」です。

(そうするにはちゃんとわけがあります)

 

いま振り返ると、「通りをよくする」という「柴胡」と「黄芩」の意識が強いような鍼ばかりをしていたんじゃないだろうか、と改めて漢方の勉強をしていて思います。

もちろん「そうなってはいかんぞ」という訓示は、これまでも諸先輩から受けてきたのですが、あらためて学び直すと、そう感じます。

 

 

刺す鍼は一本ですが、例えば小柴胡湯が適応になりそうな患者さんでは、

柴胡・黄芩・生姜・人参・炙甘草・大棗、、、の働きを最終的にしてくれそうな、ただ一カ所のツボへの刺入に込める。

 

そう意識すると、ツボの選び方も、鍼の刺し方も、全然変わってきたように思います。

 

 

次回は、同じ少陽の名を冠する臓腑経絡、「少陽三焦」の働きと、これを動かすことによって改善するであろう(多分、小柴胡湯を使って治してきた先生もいるんじゃなかろうか、と思しき)病理を書いてみます。

 

・・・・誤解のないように書いておきますが、肝・胆の故障の方が多いからと言って、だれもかれも小柴胡湯を常用すれば皆、元気になるわけでは断じてありませんからね!!

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