今回はちょっと一休み。
小柴胡湯の話を書いていて、ちょうど「半夏」という生薬が出てきたので、日本人の文化に残る漢方の話。
小柴胡湯と、以前書いた小青竜湯にも登場しましたが、
「半夏」の作用は
「燥湿化痰」
「降逆止嘔」
「消痞散結」
といって、簡単に言ってしまえば「痰を下して、吐き気を治す」薬です。
最古の薬学書、『神農本草経』でも
半夏。一名地文。一名水玉。味辛平。生川谷。
治傷寒寒熱、心下堅、下氣、喉咽腫痛、頭眩胸張、咳逆腸鳴。止汗。
…とあり、胸から上が苦しいのに良さげな書き方をされています。
喘息持ちの方は、思わず口にしたくなりそうな薬ですが、うっかり加工前の半夏を口にしようものなら、どえらいメに遭うそうなのでやめましょう。
私の師匠が、自分自身で実験したらしいですが「口からノドまで焼けて大変だった」そうです。
・・・で、生のショウガをかじると、緩和したらしいです。
小柴胡湯でも小青竜湯でも、生姜または乾姜(乾燥させたショウガ)が入っていて、生薬の半夏を加工する際にもショウガを加えた水を使うところをみると、生姜と半夏は特別な関係にあるようですね。
(この辺りの詳しい機序は、私もよく知りません。知ってる人がいたら教えてくださいm(_ _)m)
さて、この半夏ですが、正体は「カラスビシャク」の根っこ。
厳密には「塊茎」といって「地下茎の一部がでんぷん質を蓄え変質したもの」なんだって。
カラスビシャクは「サトイモ科」なので、芋みたいなもんなんでしょう。
で、やっとこさタイトルの「半夏生」のことですが、
半夏生とは夏至から11日目のことを指し、田植えの終わった農家が休息を取る日だったそう。
七十二候の夏至末候は「半夏生ず」といって、カラスビシャクが生えてくるころとされます。
半夏生を過ぎて植えた稲は、秋の収穫が減ってしまうそうで、休みを目指して仕事をせっつかせる先哲の知恵が生きているのかもしれませんね。
ところで、この辺りでもカラスビシャクは生えているんかな?
東アジア各地に自生する「雑草」らしいんですが、見つけた人いたら教えてください。
案外、モリモリ生えていたりして( ^)o(^ )
(余談)
半夏生という草もあります。
こちらはドクダミ科。
半夏が生える時期に花が咲くのでその名がついたんだとか。
(参考)
中医臨床のための方剤学
中医臨床のための中薬学
生薬単
日本の七十二候を楽しむ ー旧暦のある暮らしー
神農本草経解説