漢方と鍼灸20 麦門冬湯③

前回は麦門冬湯に入っている人参を中心に、「補法」「補薬」について、ちょいと脱線して書きました(笑)

今回は、甘草と大棗について。
甘草(カンゾウ)は、聞いたことのある方も多いと思います。
最古の薬学書、『神農本草経』の記載を見てみましょう。

 

甘草、味甘平。主五臓六腑寒熱邪気。堅筋骨、長肌肉倍力。金疱、。解毒。久服軽身、延年。

 

…甘草、味は甘・平。五蔵六腑の寒熱邪気を主る。

筋骨を堅くし、肌肉を長じ、力を倍す。

金創・尰(ショウ=下腿の腫れる病気、脚気の類とも)、毒を解す。

久しく服せば、身を軽くし、年を延ぶ。…

…相変わらず、これだけみたらサッパリなので(笑)、歴代の医家の経験を踏まえた、現代における使われ方から書いていきます。
甘草は「補中益気」:胃を中心とした消化器官のエネルギーを益す作用が強く、
「脾胃(消化器官)の正薬」と呼ばれ、
主に胃腸系統がひどく弱ってしまった時に使われます。
 
その際の元気の付け方が、前回でも書いた氣=エネルギーを「集める」という元気の付け方なのですが、
その集め方というのが、氣の巡行を「ユックリさせる」という働き方によるようです。
東洋医学の世界では「甘味」は、氣(エネルギー)の振る舞いを「緩める」作用を持つとされ、
甘草の作用は、まさに「甘味」による作用そのものとも言えます。
この性質を利用して、一緒に入った生薬を「胃に引き留め、じっくりと効かせる」という役割や、
一緒に入っている生薬の作用を「緩やか」にするという役目も担います。
そんな作用からから、さまざまな方剤でセットにつかわれることが多い生薬です。
ちなみにイライラした時に、「甘」いお菓子を食べると、ホッとするのは張り詰めた気を「緩める」からなんだそう。
 
大棗も同じく、「味が甘・平」ですが、働きがちょっと違います。
大棗、味甘平。生平澤。治心腹邪氣。安中養脾、助十二經、平胃氣、通九竅、補少氣少津身中不足。大驚、四肢重、和百藥、久服軽身、長年。葉覆麻黄能出汗。(『神農本草經』)
…大棗、味は甘・平。平沢に生ず。
心腹邪気を治す。中を安んじ、脾を養い、十二經を助け、胃氣を平らにし、九竅を通じ、
少氣・少津・身中不足を補う。
大いに驚き、四肢重し、百藥を和し、久しく服せば、身を軽くし、年を長くす。
葉は麻黄を覆い、能く汗出だす。…
 
よくわからない言葉もいっぱい出てきましたが(笑)、
麦門冬湯において重要になってくるのが、
少氣・少津・身中不足を補う。 
 
というところ。
津とは水…体液のことで、
氣とは、エネルギー。
(…しょっちゅう”氣”が出てきますけど、そのうち、”氣”についても頑張って書いてみましょう。ここではエネルギー、としておきます)
エネルギー不足&体液不足を補う、ということですね。
その前文から 中を安んじ、脾を養い とあります。
東洋医学の世界では、氣と体液を飲食物から生成するのは「脾胃」(=消化器官)が担うとされます。
なので、もともと大棗は脾胃を元気づけることで、水とエネルギーを補充させる作用を持っている、ということなのですが、
ここで甘草とペアになることで、胃の周辺を元気づけて、氣と水を作らせる、ということです。
さて、ここで麦門冬湯の出典、『金匱要略』に戻ってみましょう。
火(大)逆上氣、咽喉不利、止逆下氣者、麦門冬湯主之。
、、、というのが、麦門冬湯だという話しでした。
肺の病気で、火=熱エネルギーが上に昇って、酷いセキに苦しんで、さあ大変! という事態を収めてくれる、薬なのですが、
その火の収め方が、
①で書いた麦門冬の「潤す」作用と、
前回②で登場した人参、
今回③、書いた甘草・大棗、更に粳米の作用も加わって、
「脾胃」=消化器官を元気づけて、胃腸で「水」を生成する機能を奮い立たせ、
「自力で鎮火」させる方向に向かわせる、という薬なのだろうと推察できます。
前回②でも書きましたが人参(ニンジン)は、結構、体力を削られちゃった人でも元気にするような薬です。
人参に加えて、甘草・大棗も「補藥」ですから、麦門冬湯を使うような肺の病気は、「肺はもちろん、胃を中心に特に水枯れを起こすような重篤な状態」(東洋医学では、肺の水枯れ=「肺陰虚」& 胃の水枯れ=「胃陰虚」といって、本格的に進行すると命に関わります)で使われたことが想像できます。
ただ、いますぐ生命の危険が迫っているほど体力が削られているわけではなくても、出産や過労、睡眠不足などがたたって、一時的に「陰虚」の状態に陥り、咳が止まらない、ということはよくあります。
(出産による出血、過労や睡眠不足は、いずれも水=「陰」を損なう行為です。まずは、ちゃんと寝ましょうネ☆)
鍼灸の臨床でも、咳に限らず、頭痛やめまい、肩こり、動悸、etc...挙げてくとキリがないですが、様々な症状をストレスや過労から引き起こしている人に、少し「潤す」方向にもっていくツボに「補う」鍼をすると、いまいち治りが悪かったのが、ポンと良い方向に展開することはよくあります。
その際に、「体内の水を生成するのは、「脾胃」=消化器官 が飲食物から作っている」ということをよ~く踏まえておかないと、当然、鍼灸でも上手くいきません。
人参・甘草・大棗・・・いずれも「脾胃」を強く意識した生薬であり、脾胃を元気づけるツボをよく選ばないといけないケースはままあります。
そういえば、飽食の現代だからなのか、な~んかいまひとつ治りが良くないなァ…という時に、よ~くツボを探っていくと、脾胃に関するツボに反応があって、そこを鍼なり灸なりをするといい方向に動き出す、というのはよくあるなぁ、、、と書いてて思いだしました。
逆に言えば、脾胃を弱らせてしまうと病気の治りが何でも悪くなるということ。
甘草は脾胃を元気づける生薬ですが、砂糖菓子に代表される現代の「甘味」は逆に脾胃を弱らせます。
「甘味」は、氣の動きを「緩める」と書きましたが、動きが緩めさせ過ぎて、停滞して、ヘドロが溜まるようなイメージです。
かくいう私も、酒も甘味もどっちも来い、な食い道楽ですが、どちらも控える日を意識して作りたいものですね。
すいません、脱線しすぎましたm(_ _)m
次回は、残りの粳米と半夏について書いて、まとめます。

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